山岳診療所で活動する上で必要な医療スキルは?
これはなかなか難しい問いだとは思いますが、私は敢えてこう答えたいと思います。
「市民向けの基本的な応急手当の知識と技術」
これは主にナース向けの言葉として聞いてほしいのですが、夏山診療所でのボランティア活動に際して勉強していくとしたら、まずは「市民向けの基本的な応急手当の知識と技術」をしっかり押えておいてほしいと思います。
看護師というのは医療の専門家と思われがちですが、教育課程では病院内の、しかも病棟で働くことを前提としたことしか教わりません。
ですので、なんの設備もない場所でどう対応したらいいかということなんかは、ほとんど教わってこなかったはずです。
勤務部署が救急外来だったら、多少はスキルはあるかもしれませんが、それとて病院という設備も医材も薬もスタッフも揃った場所という前提条件付き。
つまり看護師といえど、野外で突発的に遭遇した事故などにきちんと対応できる能力を持った人は非常に限られているというのが現実だと思います。
山岳診療所は、診療所という名前が付いていても、場所は山奥の孤立した山小屋。電気も不自由だし、医療器具も限られる場所。基本的には自分の身ひとつですべてに対応するくらいの気構えがあった方がいいくらいの場所です。
そんな場所でもっとも必要なのは、器材も医薬品も使わないで応急の手当てを行なうという市民向け救急法の内容と言えます。
それを最低限押さえた上で、看護師として何ができるか、という視点に入っていくのだと思います。
ということで、まずは医学書ではなく、アウトドア関係のファーストエイド読本のようなものを一冊きちんと読み込むことをお薦めします。